本研究は、加圧トレーニング(血流制限下での筋力トレーニング)が、筋力増大の効果だけではなく、靭帯・腱の治癒・再生を促進するかについて検証を行うことが目的である。加圧トレーニングは成長ホルモンの分泌促進により、従来の筋力トレーニングよりも軽負荷・短時間で筋力を増大させることができるとされている。スポーツ選手の靭帯・腱損傷に対するリハビリテーションでは、軽負荷の筋力トレーニングから始め、出来る限り短時間で競技復帰を目指す。もし、加圧トレーニングが靱帯や腱の治癒・再生にも有効であるならば、スポーツ選手の外傷・障害からの早期復帰を実現させることができると考えられる。 本研究では、膝前十字靱帯(以下ACL)の再建術後患者を対象に加圧トレーニングを行い、再建した靱帯、さらには再建のために採取した腱の再生度合いを評価し、検討した。今年度は、加圧トレーニングを用いるにあたりリハビリテーション実施上の安全性を担保しながら効果的なトレーニング実施のためのプロトコルを検討しながら進めた。靱帯と腱の成熟度の評価については非侵襲的なMRIを用いて行った。我々はこれまでに通常のリハビリテーションを行ったACL術後の被験者を多数評価し、その手法を確立してきた。そこで、本研究ではこれまで同じ評価項目で調査してきた被験者男性9例、女性9例をコントロール群、新たな被験者男性11例、女性7例に加圧トレーニングを付加してトレーニング群とし検討した。その結果、男性加圧群において再生した腱が有意に太くなり、治癒・再生促進に効果がある可能性が示唆されたが、女性では結果が得られなかったこと、また、本研究で実施しているリハビリテーションプロトコルが通常加圧トレーニングよりも低負荷であるため、本研究でのトレーニングが先行研究で得られている内分泌系の変化をもたらしているかどうかについて、今後検証の必要性が示された。
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