本研究では、加圧トレーニング(血流制限下での筋力トレーニング)が、筋力増大の効果だけではなく、靭帯・腱の治癒・再生を促進するかについて検証をする。加圧トレーニングは成長ホルモンの分泌促進により、従来の筋力トレーニングよりも軽負荷・短時間で筋力を増大させることができる。スポーツ選手の靭帯・腱損傷に対するリハビリテーションでは、軽負荷の筋力トレーニングから始め、出来る限り短時間で競技復帰を目指す。もし、加圧トレーニングが靱帯や腱の治癒・再生にも有効であるならば、スポーツ選手の外傷・障害からの早期復帰を実現させることができる。 本研究では、スポーツ選手の靱帯損傷でも最も重篤な外傷の一つである膝前十字靱帯の再建術後患者を対象に加圧トレーニングを行い、再建した靱帯、さらには再建のために採取した腱の再生度合いを評価し、検討した。 本研究の実施にあたり、我々の管理下においてリハビリテーションプログラムに加圧トレーニングを付加し、臨床データの取得と実験評価データを取得したが臨床的な問題点は認められなかったため、これらの被験者のデータを加圧トレーニング群として採用した。 術後1ヶ月後から4ヶ月後までの3ヶ月間をトレーニング期間とし、術後6ヶ月まで1ヶ月毎にMRIによる腱および靱帯の形態や成熟度を評価した。特に成熟度においてはヒトを対象とするため、侵襲を伴う組織学的な評価によって経過を追うことは困難なため、MRIのT2緩和時間を用いて行った。 その結果特に男性被験者においては加圧トレーニングを実施して1ヶ月後の評価において対照群よりも形態学的に太く再生した。一方、成熟度においては有意差は認められなかった。従って、術後の再生腱においては加圧トレーニングによる腱組織再生の促進効果を狙える可能性が示唆された。今後は組織学的な検討や機能との関連について詳細に検討する必要がある。
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