競技選手やスポーツ愛好家は、競技前のウォームアップを習慣的に行っている。しかしながら、実際に行われているウォームアップの内容は経験などに基づいて決められていることが多く、特に瞬発系競技のパフォーマンスを高めるためにはどのようなウォームアップを行えば良いのかについてはほとんど知られていない。近年の研究では、高強度短時間の筋収縮後にみられる"活動後増強効果"の役割が注目を浴び、ウォームアップとしての高強度短時間の筋収縮が瞬発系競技のパフォーマンスを向上させるか否かについて数多く検討されている。しかしながら、短時間と言えど高強度の筋収縮は活動後増強の効果だけではなく筋疲労をも引き起こすため、その効果については一致した見解が得られていない。我々は昨年度および本年度に、短時間高強度のウォームアップが瞬発的(動的)な発揮筋力に対して有効であるが、同時に筋疲労、特に中枢性疲労が生じていることを明らかにしてきた。そこで、我々は中枢性疲労を抑えつつ活動後増強を引き起こす方法として筋電気刺激法に着目した。2011年度は筋疲労を抑えつつ活動後増強効果を効率的に引き起こす筋電気刺激法のプロトコルを探索し、最適な刺激プロトコルを決定した。本年度は、その刺激プロトコルを用いることにより、随意収縮による短時間高強度のウォームアップ法は動的な発揮筋力増強に有効であるが、筋電気刺激法を用いたウォームアップは、より一層即時性があり、かつより効果的であることを明らかにした。本研究の結果は、適切な筋電気刺激法を用いたウォームアップ法は、瞬発系の競技パフォーマンスを向上させる効果を有することを示唆するものである。
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