まず気分評価票(BRUMS}を用いて、スポーツ活動において睡眠時間が普段の気分状態に関連があるか検討し直した。対象は、調査した小・中学生のうち中学生運動部所属の197名。結果、就寝時間は気分6尺度全てにおいて弱い相関があり、24時以降の群とそれ以外の群において有意差を認めた。 次に、普段とあがり状態における実際の変化について信頼性を測るため青年期において調査した。対象は、通常5時間以上の練習がある競技特性の青年期46名(平均18.7歳)、そのうち状態・特性不安検査(STAI)を行えた21名を評価した。7ヵ月間に渡り心理・身体的変化を観察し、普段日と競技本番前にSTAIを実施。毎日練習にさらされている選手は、睡眠時間および状態不安が実際に気分変化と関連があるか検討した。 今回の対象競技では日本の標準化数値よりも更に高い特性不安を持つ選手が81.0%(5段階評価で5は38.1%)を占めた。急激な練習環境、練習変化により、状態不安が相関変動する時期があり、気分不安定さとの関連もみられた。就寝時間による相違はなく、特性・状態不安群別にも気分評価を経時的に比較しても有意差はなかった。就寝時間の問題は発育期段階での成長要因の可能性はあるので、今後の課題検討とする。 Case studyでみると、特性不安が高くとも状態不安が上昇しやすい訳ではなく、環境要因(時期)の影響が示唆された。状態不安は、環境や練習変化のある時期に顕著に関連があった。状態不安の変動が「あがり」に繋がっていると捉えられた。個々に対応する上で、このパターンを把握することがパフォーマンス力の維持、傷害予防指導が出来るのではないかと考える。本番数日前~当日までの状態不安の変化を把握し、個人的指導に生かすかが重要課題である。 現在、量的研究として実験的にあがり場面を実験条件として統制し、精神負荷課題と作業効率(集中練習)課題を施行。および精神系遺伝子多型解析を合わせて検討を進めている。
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