昨年度までに得られたあがり条件下で行ったそれぞれの結果に基づいて、日本人特有の遺伝子多型との関連性について検討することをまず目的としていた。震災の影響により予定していた実験(公演)の機会が本年度に遅延していたが、実質条件が整わず本実験を組み直す必要となった。 基礎実験として、127名を対象に実験条件を人前でみられているというストレス下に統制し、局所(指)の単純反応、選択反応、全身反応時間について左右別に測定を行い、性格特性として性格検査を行い精神不安定傾向の高低別に2群にわけ比較検討を行った。 結果、情緒不安定特性(抑うつ、気分変化、劣等感、神経質)において特に局所の弁別・判断・選択時間に有意差がみられた。よって、人前などのあがる条件下においては、性格特性で情緒不安定特性がある群では局所における弁別・判断・選択時間に差がみられ、何等かの中枢系の遅延が考えられた。また全身反応時間においても2群間に有意差がみられたため同様の結果が考えられた。発育期特に6~12歳においてはまだまだ神経系の発達が盛んな時期であるため、感情に関係した運動指令出力系での刺激伝導時間の遅延が更にパフォーマンスに対して影響を与えると考えられた。 最終年度ではあったが試薬保管していた冷凍庫が電気工事事故に見舞われ、保管品の一部損壊により一から準備し直すという状況になった。そのため全精神系遺伝子多型解析と評価を行えきれず、現在DNAを一つ一つ定量化し直し、PCR法によるDNA増幅と電気泳動を行い写真撮影および解析を進めている。少し研究実施計画が前後することとなったが、ゲノム解析・評価は遅れを取り戻しつつ継続して成果をまとめることとする。
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