研究概要 |
エネルギー必要量推定のための知見を得ることを目的として、車いすトップアスリートの各種運動時のエネルギー消費量の測定を平成23年度末に実施し、24年度前半はその分析を進めた。対象は脊髄損傷で腹筋が機能しない、クラスT53の30歳代男性2名である。体重は選手Aが58.5kg、選手Bは66.0kgであり、選手Aは選手Bよりも損傷部位が高く障害が重い。 エネルギー消費量測定は生体ガス分析装置(ARCO-2000、アルコシステム社)にて行った。早朝空腹時に安静座位の状態と、食後3時間後からハンドエルゴメーター(以下エルゴ、MONARK社)とローラー(車いすレーサーは選手の私物を使用)による運動時のエネルギー消費量を測定した。 座位安静時エネルギー消費量は選手Aで1,180kcal/日、選手Bで1,580kcal/日であった。、体重あたりでは選手Aで20.2kcal/kg/日、選手Bで23.9 kcal/kg/日となり、いずれも健常者で示されている数値と比べて低かった。 エルゴ漸次運動負荷テストとローラー漸次運動負荷テストでは、エルゴ運動の方が選手の主観的負荷が大きかったが、エネルギー消費量はローラー運動の方が高かった。またいずれも選手Aの方が選手Bよりもエネルギー消費量が低かった。これらの運動のエネルギー消費量を安静時エネルギー消費量で除すと、選手間の差はエルゴ運動・ローラー運動ともに少なくなり、特にインターバルトレーニングでは選手Aと選手Bで近似した値となった。 ただしローラーのインターバルトレーニングでは、3回実施した中での個人内変動、選手Bでは日間変動による差が確認できたこと、また座位安静時エネルギー消費量測定値について再検討する必要も考えられたことから、平成24年度末に同一被検者で再度同様の測定を実施し、現在分析を進めている。
|