本研究の最終的な目的は、方向転換を伴う足部のトラップ動作について、映像とセンサーを用いた動作分析を行い、センサーデータによってトラップの成否を評価し、映像データを用いてトラップ動作中の、身体各部の運動学的変量を定量化し、最適なトラップ動作を探索することである。本年度は、その第一段階として、トラップ動作の評価を、加速度センサーで計測されるデータによって試み、力学的変量によってトラップ動作の成否を判定する評価指標を作成すること、および映像分析によって求めるトラップ動作時の運動学的変量によって示されるトラップの成否要因について明らかにすることに取り組んだ。 熟練者4名、非熟練者4名を対象として、正面方向から3段階の速度で射出されたボールを止めるトラップ動作を行わせた。利き足の外踝と第5中足骨に加速度センサーを装着し、トラップ動作時の衝撃加速度を計測した。同時に2台のカメラを用いて被験者を前方左右45(deg)方向から60(Hz)で撮影し、DLT法を用いて実座標を構築し、動作分析を行った。さらに、2次元DLT法を用いてトラップ後のボール移動距離と速度を算出した。 トラップ後のボール速度に関して、高速でのトラップ後のボール速度には有意差が認められた。この時、熟練者は非熟練者と比較してトラップ時の股関節角度変化が小さく、速いパスをコントロールする場合では、股関節を主体とした動作よりも、膝関節を主体とした動作が有効であることが示唆された。 加速度データに関しては、外踝および第5中足骨における平均最大加速度をパススピードおよびトラップ後のボール速度によって分類し比較した結果、いずれの分類においても第5中足骨が有意に大きかった。これらの結果から、速いパスの処理には膝関節の外旋が関わっていることが示唆された。
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