サッカーにおいて、ボールを止める技能(トラップ)はボールを蹴る技能と同等に重要である。しかし、トラップ動作に関してバイオメカニクス的観点から検討している研究はほとんど見当たらない。本研究ではサッカー競技において頻繁に用いられる、方向転換を伴う足部のトラップ動作について、映像とセンサーを用いた動作分析を行い、センサーデータによってトラップの成否を評価し、最適なトラップ動作を探索することを最終的な目的としている。 今年度の課題では、熟練者を対象として、1.足下にボールを止めるトラップ動作、2.90°の方向転換を伴うトラップ動作、以上2種類のトラップ動作について加速度センサーと映像データを用いて動作および足部に生じる加速度の定量化を行った。さらに、ボールを止める際のボールの回転数および回転の方向がトラップの成否に及ぼす影響について検討した。その結果、ボールを足下に止めるトラップ動作では、股関節および膝関節の外旋動作と足部加速度、そしてトラップ後のボール速度に有意な相関関係が見られた。このことから、股関節および膝関節の外旋動作がサッカーのボールトラッピングにおいてボールスピードの減少に有効であると言える。また、トラッピング後のボール回転は逆回転しており、失敗試技ではボール回転は順回転となる傾向が見られた。失敗試技では成功試技よりも足部の高さがボール中心に近く、足部の高さが近くなるにつれボール回転が順方向となることが明らかとなった。さらに、足部の位置とトラッピング後のボール速度の間には有意な相関関係が認められた。これらのことからサッカーのインサイドトラッピングにおいては、ボール中心よりもやや高い位置でボールコンタクトすることが、ボールトラッピングの精度を高める方略の一つであることが示唆された。これらの結果はトラップの成否要因となる動作を判断する際に、貴重な指標となると考えられる。
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