本研究の目的は国内一流選手と大学競泳選手の各種運動学的変量を比較することで競技力向上のためのスタート技術を検討することである.被験者は一流競泳選手2名(男子1名,女子1名),大学水泳部に所属する競泳選手21名(男子11名,女子10名)であった.電気的に同期された3台のCCDビデオカメラ(60fps)を用いてスタート局面を撮影した.映像から実長換算法を用いて各種運動学的変量(跳び出し水平速度,跳び出し速度,跳び出し角,跳び出し姿勢角,入水角,入水姿勢角,入水迎え角,ブロックタイム,15m通過時間,)を算出し,一流選手と大学選手を比較することで一流選手のスタート動作の特徴について考察した. 本研究の結果により,一流選手のスタート動作の特徴として,跳び出し時の身体重心水平速度および身体重心速度が大きいこと,ブロックタイムが短いこと,入水姿勢角(入水開始時の大転子と手部を結ぶ線分が水面となす角)と入水角(入水開始時の身体重心の速度ベクトルが水面となす角)の差分を示す入水迎え角が0°に近いことが示された.
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