研究概要 |
これまで,思春期後期年代を対象とした体育授業において疾走能力を改善する方策を検討してきた結果,プライオメトリックトレーニングにより,脚が短時間で大きな力を発揮する能力を高めることの有効性について報告してきた.さらに,プライオメトリックトレーニングの中でも片脚交互に踏み切ることを繰り返しながら前方へ移動するバウンディングは,その遂行能力を評価する立五段跳等のコントロールテストの成績が短距離走の記録と強い関係にあることから,疾走能力の改善に重要な種目と位置付けられることも考えられた.しかし,コントロールテストの成績は跳躍距離から評価したものであり,バウンディングを遂行する能力の,いかなる要因が疾走能力に関与しているのかは明らかにされていない.そこで本研究では,思春期後期にある男子生徒15名(年齢17.8±1.4yr,身長173.4±5.8cm,体重63.9±5.7kg)を対象に,バウンディングが踏切足を支点とした逆振り子運動にモデル化できると考え,立五段跳4歩目の最大鉛直地面反力(Fmax)を母子球と身体重心とを結んだ線分(L)の短縮量(ΔL)で除したstiffness《ばね要素》と,Lが地面と成す角《起こし回転要素》について分析し,35mの助走を付けた後の10m全力疾走速度《最大疾走能力》との関係について検討した.その結果,最大疾走能力が高い者は,バウンディング踏切時のΔLが小さくFmaXが大きいことでstiffnessが高いこと,下肢が過剰な屈曲をせずに素早く身体を跳ね返すため進行方向への起こし回転が小さいこと,が明らかにされた.今後は,水平移動中に高いばね能力を発揮するには,どのようなプライオメトリックトレーニングを考える必要があるのか,その導入手順や具体的な方法について検討していく必要があると考えている.
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