【目的】 前年度に実施したトレーニング実験では,数名の被験者が怪我や体調不良のために実験を途中棄権した.そこで今年度も前年度と同様のトレーニング実験の効果,すなわち,高酸素,常酸素及び低酸素環境下における高強度インターバルトレーニングが,生理応答および超最大運動のパフォーマンスに及ぼす影響について検討した. 【方法】 大学体育会カヌー部に所属する男子選手26名(前年度との総計)を対象として,自転車エルゴメータを用いた高強度インターバルトレーニングを週に2回,3週間にわたり実施した.トレーニング初週は,体重×0.075kpの負荷での30秒間全力ペダリンを4分間の休息をはさんで4セット行わせ,それ以降は一週毎に1セットずつ増加させた.トレーニング中に吸引する酸素濃度は13.6%,20.9%および60%O2の何れかとし,吸引する酸素濃度によって被験者を3群に分類した.トレーニングの前後で,漸増負荷テスト,90秒間全力ペダリングテスト及び乳酸カーブテストを実施し,トレーニング効果を評価した. 【結果・考察】 3週間,全6回のトレーニングによって,最大酸素摂取量,最大有酸素性パワー及び最高血中乳酸濃度はいずれの群においても有意に向上した.しかしながら群間に有意な差は認められなかった.90秒間全力ペダリングテストの発揮パワーはすべての群で有意に増加したが,無酸素性エネルギー供給量の増加は常酸素群でのみ認められた.また,乳酸カーブテストは高酸素群のみ有意に改善した.これらの結果から,高酸素環境下での高強度インターバルトレーニングは有酸素性能力,特に末梢(活動筋)の酸化能力の改善に,常酸素環境下でのトレーニングは無酸素性能力の改善にそれぞれ効果的であることが示唆された.
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