これまで新規の脂肪滴結合タンパク質やリパーゼが次々と発見され、それらの生理的機能が次第に明らかになってきたが、その分子レベルでの脂肪合成・分解のメカニズムについては現在の研究課題であった。我々は脂肪分解刺激に対する脂肪滴および脂肪滴結合タンパク質の応答(局在変化や加水分解活性)について3T3-L1脂肪細胞を用いて解析した。その結果、脂肪分解過程で産生された脂肪酸が小胞体で再エステル化して中性脂肪となり、微小脂肪滴として出現することを明らかにした。その生理的意義は脂肪滴の表面積を増加させ、リパーゼによる加水分解活性を高めていると結論付けた。また、複数の脂肪滴結合タンパク質が微小脂肪滴に結合し、脂肪分解に働いていることを明らかにした。 一方、上述した脂肪分解制御機構を踏まえ、脂肪分解活性を高める生理的ストレスを検討した。一過性運動時の代謝変化の影響を模擬するモデルとして、骨格筋のミトコンドリアバイオジェネシスを亢進する生理的ストレスである乳酸、活性酸素、AMPキナーゼ、一酸化窒素、カルシウムをそれぞれ誘導する化合物や薬剤を3T3-L1脂肪細胞に加え、脂肪細胞の脂肪分解活性を高めることが可能かを検証した。その結果、脂肪細胞の脂肪分解関連タンパク質の発現量やミトコンドリアバイオジェネシスを増加させ、脂肪分解活性を高めることを明らかにした。さらに、これら脂肪分解活性を高めることが可能な化合物の混合物が、抗肥満作用を有することを動物実験により明らかにした。
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