本研究は3年間の継続研究であり、本年度はその初年度に当たる。本研究の目的の1つは、加齢に伴う骨格筋の変化、すなわち老化現象のタイムコースをマウスを用いて確認し、その実験モデルを確立することであった。また、もう1つの目的は、若齢期に開始し老齢期まで継続する運動または筋活動が骨格筋の廃用性萎縮や代謝機能の低下といった老化現象を抑制しうるかを検討することであった。マウスのライフスパンが2年以上であることから、本年度にそれぞれの実験を開始し、今後の経過を観察しなければならなかった。そこで本年度は、3、12ヶ月齢のICR系雄性マウスの骨格筋の摘出を行った。今後、老齢マウスの骨格筋と比較するためにそれらのサンプルはストックしている。サンプルのうち、筋線維数分析用のものはキレート剤を入れたパラホルムアルデヒドバッファーを用いて筋線維が完全に弛緩した状態で保存し、生化学および組織化学用の分析に用いるものは液体窒素で凍結させ、マイナス80℃で保存している。なお、12ヶ月齢の時点では、筋重量から骨格筋の萎縮は見られなかったので、18ヶ月齢以降のマウスの分析を今後行う必要がある。また、3ヶ月齢マウスを用いて、回転車輪付きケージでの飼育による自発的な持久走運動、および片脚の腓腹筋の腱切除による足底筋への機能的過負荷を開始した。今後、筋萎縮などの老化現象が確認できる月齢まで飼育して、対照群または対照脚と比較することにより、運動・筋活動の継続による骨格筋の老化現象の抑制効果について分析する予定である。
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