本研究(平成22年度)では、運動時にMg要求性が亢進するか否かについてラットを用いた実験を行った。その結果、高強度運動負荷(体重14%の負荷で20秒間の強制遊泳を14回反復)や低強度運動負荷(無負荷で2時間の強制遊泳)でMgの見かけの吸収率が上昇すること、血中Mg濃度が低下すること、骨格筋(ひふく筋)中のMg濃度の上昇とPK、PFK活性との間に有意な相関があることが見出された。続いて血中Mg濃度への運動負荷の影響を検討するため、異なるMg摂取量の運動負荷ラットを用いたMg出納実験を行った。無負荷で1時間の強制遊泳を供したラットに異なる3つのMg含有量の飼料を給餌させ2週間飼育した。その結果、高Mg摂取ラット(飼料濃度1250ppm)では血中Mg濃度の低下は観察されなかったもののMg出納は安静ラットに比して高値を示した。これらの結果は、血中Mg濃度に非依存的に運動刺激が食餌由来のMgの組織への取込みを促進していることを示唆している。この仮説を検証するために、代謝性アシドーシスを誘発する塩化アンモニウム摂取による血中Mg濃度およびMg出納に及ぼす影響を検討したが、1.5%塩化アンモニウム摂取により血中Mg濃度は上昇したもののMg出納には影響を及ぼさなかった。これらの知見から、現在は食餌性Mgの骨格筋への取込みについてTRPM7の発現量を中心に検討している。平成22年度に実験に供したラット骨格筋におけるTRPM7、腎臓におけるTRPM6、Claudin16などの発現量を引き続き検討し、運動時のMg動態について検討する。
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