研究概要 |
絶食時には,遅筋に比べて速筋で優先的に筋萎縮が生じることが知られているが、その理由はこれまで明らかにされていなかった。このことから、エネルギー枯渇時に誘導されるタンパク質分解経路に焦点を当て,絶食時の筋タイプ特異的な萎縮メカニズムを明らかにすることを目的とした。本研究では、収縮活動レベルの違いが絶食時の筋萎縮の程度に影響をもたらすのではないかという仮説を立て,2011年度は筋活動レベルが減少するモデル(除神経)を用いて、絶食に伴う筋萎縮への筋活動の影響を検討した。実験にはFischer系雄ラットを用い、除神経群、絶食群(72時間)、絶食+除神経群に分類した。徐神経は、筋萎縮をもたらすとともに筋タンパク質の分解を担うオートファジーの誘導レベルを増加させた(LC3-IIの発現量の増加)。また、オートファジーの活性化に関わるFOXO3aのリン酸化レベルを増加させた。絶食を行った群では、FOXO3aの増加は有意なものではなかったものの、LC3-IIの顕著な増加が認められた。一方、絶食+除神経群では、筋萎縮の程度が最も顕著であり、LC3-IIの増加レベルも最も大きかった。このことから、絶食中の収縮活動レベルの低下は、オートファジーのようなタンパク質分解経路を介して筋萎縮をさらに高める可能性が示唆された。このような結果は、日常的な収縮活動レベルが低い速筋において絶食時の筋萎縮が顕著ある原因を部分的に説明することにつながるかもしれない。今後の研究では、神経活動とオートファジー誘導の関連性をさらに明らかにするとともに、他のタンパク質分解経路や合成経路の変化についても詳細に検討を加える必要がある。
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