本研究では、カルノシン摂取が筋疲労を軽減させる作用機序について、筋小胞体の機能と筋エネルギー代謝の観点から検討することを目的とし、平成22年度は、ラットを被検動物として、カルノシンの長期摂取による骨格筋カルノシン濃度および筋小胞体の機能に及ぼす影響と両者の関連性について検討した。実験にはWistar系ラット(6週齢、雄、40匹)を用い、これらを1週間の予備飼育後、カルノシン摂取(carnosine ; Car)群とコントロール(control ; C)群とに分け、5週間飼育した。さらに、Car群、C群の半分を解剖時に運動を負荷する群(exercise ; E)と負荷しない群(rest ; R)とに分け、計4つ(Car+E群、Car+R群、C+E群、C+R群)の群を設定した。被検筋には、速筋線維からなる腓腹筋表層部と主に遅筋線維からなるヒラメ筋を用い、得られた筋サンプルより、筋小胞体の機能および骨格筋カルノシン濃度を測定した。筋小胞体の機能については、筋サンプルから筋小胞体を精製し、SR Ca^<2+>-ATPase活性およびCa^<2+>取り込み・放出速度を分光光度計、細胞内イオン測定装置を用いて測定した。骨格筋カルノシン濃度については、残りの筋サンプルをホモジナイズし、アミノ酸分析機を用いて測定した。その結果、Car群では、骨格筋カルノシン濃度が有意に増加し、それに伴い、Ca^<2+>放出速度およびCa^<2+>の取り込み速度において、運動による低下を抑制することが明らかとなった。本研究の結果より、カルノシン摂取による筋疲労の軽減は、筋小胞体の機能を改善することによるものと推察される。
|