本研究では、カルノシン摂取が筋疲労を軽減させる作用機序について、筋小胞体の機能と筋エネルギー代謝の観点から検討することを目的とし、平成23年度は、運動時の筋細胞内pHをin vivoで観察することができるリンの磁気共鳴分光法(31P-MRS)を用いて、カルノシンが運動時における筋エネルギー動態、特に筋pH動態に及ぼす影響について検討することを目的とした。 一般健常男性12名をカルノシン群6名とプラセボ群6名とに分け、いずれの群も1日200mlのドリンクを30日間摂取させた。ドリンク摂取前後に、安静時および運動時の筋エネルギー代謝を31P-MRSを用いて測定した。実験運動は、MR装置内で、脚に対して任意に負荷をかけることができる運動装置を用いて、仰臥位での右脚の等尺性膝伸展運動を疲労困憊に至るまで行わせた。なお、被験者には、30日間の摂取期間中は通常通りの食事をしてもらうようにし、毎週(連続する3日間)食事調査を行うことにより、栄養に偏りがないかを確認した。本研究の結果、摂取前後での運動持続時間は、プラセボ群では有意な変化は認められなかったのに対して、カルノシン群において摂取後に有意に延長することが認められた。また、カルノシン群のいずれの被検者においても摂取後に筋pHの低下を抑制する傾向にあり、特に運動持続時間が大幅に延長した被検者においてその差は顕著であった。以上の結果から、カルノシンの長期摂取は、筋疲労の一要因である筋pHの低下を抑制することにより、運動パフォーマンスを向上させる可能性が示唆された。
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