平成22年度上半期においては、成人労働者におけるストレス対処能力sense of coherence(SOC:首尾一貫感覚)の形成に関する文献検討と、SOC研究について国際的に最も検討が行われている20th International Union for Health Promotion and Educationならびに、3rd International Research Seminar on Salutogenesisに参加し、労働者を対象としたSOC研究の実態と今後の展望について情報収集を行った。また、研究対象者のリクルーティングを行い、北陸地方の成人を対象とした追跡研究においてSOC項目を採用頂くこととしたほか、すでに実施されている全国パネル調査においてSOC項目を採用頂き、データ解析を行う下準備を行った。実際にパネルデータの分析を行い、2年間の追跡データを用いて、成人男性労働者に置いては、職業自体が2年間のSOCの変化に関与すること、2年間における職業および就業形態の変化がSOCに関連することが示され、学会発表を行い、現在論文化を行っている。 平成22年度下半期に置いては、職場環境とSOCとの縦断的関連性に関する分析を行ない、Grobal Health Communicationに投稿し現在修正作業をしている。この分析は、心理社会的職場環境に置ける裁量度が高い職場であるほど1年後のSOCの向上が見込めるという解析結果となっている。つまり、裁量度が高いほどSOCの形成につながる可能性について示された。さらにはSOCの形成要因として、家庭環境の重要性が言われていることからも、他の思春期を対象としたデータを用いて家庭環境、特に家族との関係性とSOCとの関連性を明らかにするに至った。このことから今回のテーマである成人労働者を対象とした場合に置いてもSOC提唱者のAntonovskyの仮説のように思春期における家庭環境、家族関係がSOCに関与する可能性が考えられた。
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