幼児期の午睡は,年齢の進行とともに,回数および時間が減少していくが,何歳で何時から何時間の午睡を適当とするかの基準は無い.本研究課題では,適切な午睡時間の見極めが幼児のQOLを高めると考え,その抽出を試みた. 前年度に引き続いて,日常的には2時間の午睡をおこなっている保育園3施設(A,B,C園)において,午睡時間を1時間に制限するコントロールをおこない,それにともなう行動変化を記録した. 3園の5歳児クラスで合計51名の実験協力が得られ,このうち十分な記録が得られた34名(A園5名,B園5名,C園24名)を解析対象とした.午睡制限実施後には,依存性(A園,B園)反抗(B園,C園),および攻撃性(C園)の要素で問題行動が有意に減少した(paired-t-test,p<0.1).一方,問題行動の有意な増加は1要素もなかったことから,5~6歳児にとって,より妥当な午睡時間は(2時間よりは)1時間であると考えられる.また,同年齢の幼稚園児は,ほとんどが午睡しないことから,長時間(2時間)の午睡が,入眠潜時の延長など夜間睡眠の質の低下を惹起する可能性が考えられる.午睡終了後~就寝までの運動量に関する調査などを加えて,詳しい検討が必要である.これらの結果について,日本発育発達学会および日本睡眠学会にて報告済みである. 本研究課題で協力いただいた3施設は,地域性の異なる(商工業地/住宅地,外国人率の高低など)立地であるが,共通して,午睡時間を抑えることが問題行動の低下(=QOLの上昇)を示していることから,施設の環境に依存することなく,5歳児は午睡時間の抑制が,保育指導上意義あることと考えられる.
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