適度な身体活動の実施が大腸がんの発症に及ぼす予防効果は確実であると報告されているにもかかわらず、その効果に対する国民の認知度はかなり低いことから、本年度は、身体活動による大腸がん予防効果への認知度を明らかにし、その認知に関連する要因を検討した。既存の調査会社の登録モニタ20-69歳の成人を対象に質問紙によるインターネット調査を実施した。大腸がん罹患・家族歴、大腸がんの危険因子・症状および大腸がん検査に対する知識、大腸がん罹患の危険性および予防可能性に対する信念、大腸がん関連の情報入手経験の有無、身体活動・運動行動変容状況、国際標準化身体活動質問紙短縮版、人口統計学的変数を調査した。身体活動による大腸がん予防効果の認知の有無は、大腸がんの危険因子に対する知識項目の「運動不足」において「原因である」と回答した者を「認知あり」とした。有効回答者1526名(43.6±13.3歳)を分析対象として、大腸がん予防効果の認知を従属変数、全ての変数を独立変数とした強制投入法によるロジスティック回帰分析を行った。本研究対象における身体活動による大腸がん予防効果への認知度は46.4%であった。40歳以降で、年齢は予防効果への認知と有意な負の関連が認められた。大腸がんの危険因子・症状の知識、大腸がん予防の可能性への信念、大腸がん関連の情報入手経験は予防効果への認知と有意な正の関連がみられたが、推奨身体活動量(中等度の強度以上の身体活動週150分以上の実施)の充足および運動・身体活動変容と予防効果の認知に有意な関連は認められなかった。日本人成人の50%以上が大腸がん予防効果を認知してない現状が明らかとなった。大腸がん予防に関する知識や信念が、身体活動による大腸がん予防効果への認知に対する最も強い関連要因だった。
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