研究概要 |
本研究では,高齢者の移動手段に主眼をおいた外出状況の評価項目と身体活動量,身体機能との関連性について検討し,高齢者の身体的虚弱化要因の一つとして外出形態を評価することの妥当性について明らかにすることを目的とした。茨城県笠間市の2009年度および2010年度の住民基本台帳に基づき,保健センター近隣より無作為抽出された65歳から85歳の高齢者2,100名(2009年:1,200名,2010年:900名)を調査対象とした。高齢者の外出状況は以下の3項目で評価することとした。 1.外出頻度:平均的な1週間において,外出する(自宅の敷地を越える)ことが何日あるかを尋ねた。なお,本研究は移動手段を利用した外出に着目した研究であるが,基礎的情報として,従来から評価されている外出頻度)についても併せて検討をおこなった。 2.乗物利用頻度:平均的な1週間において,乗物を利用することが何日あるかを尋ねた。 3.自転車利用頻度:平均的な1週間において,自転車を利用することが何日あるかを尋ねた。 検討の結果、乗物利用頻度を評価することで,高齢者の身体活動量および身体機能をある程度,把握できることが明らかとなった。また,「乗物利用頻度が週に1日以下の者」が,身体活動量および身体機能が不良な高齢者をスクリーニングする一つの目安となることが示唆された。乗物利用頻度は,簡単な問いであり,かつ単一項目である。現行の外出頻度による閉じこもりの評価と並んで,廃用症候群の高齢者をスクリーングする新たな指標として利用できる可能性が認められた。今後,介護予防を実践する現場で有用な指標として活用されることが期待できる。
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