細胞のストレス応答は組織の老化、細胞増殖、移動に重要である。近年、栄養制御と老化の関係が注目されており、TORシグナル、ERストレスがこれらに関与していることが明らかとなってきた。GADD34はDNA障害性ストレス、ERストレスなどで誘導されるが、栄養欠乏ストレスでも発現が上昇すること、さらに、GADD34のTORシグナルへの関与が示唆されていることから、老化にも重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、個体・細胞老化、栄養欠乏ストレス、細胞増殖におけるGADD34の機能を明らかにすることを目的としている。細胞老化におけるGADD34の関与を調べる為に、GADD34ノックアウト(KO)マウスと正常マウスから骨髄を採取し、GM-CSF存在下で増加するミエロイド系細胞を半年間、長期培養し、細胞老化の指標の一つであるSA-β-galactosidase活性を調べた。その結果、GADD34KO由来細胞では正常の細胞に比べ有意な活性の上昇がみられた。また、長期培養によりGADD34KO由来細胞では正常の細胞に比べ増殖速度の低下がみられた。このことから、GADD34K由来細胞では、より細胞老化が進んでいることが示唆された。また、栄養制御と老化が関係していることから、in vitroでアミノ酸欠乏について調べた結果、GADD34はチロシン・システインの欠乏状態で強く発現することが明らかとなった。これらのアミノ酸欠乏状態でGADD34KOマウスまたは正常マウス由来ミエロイド系細胞を活性化させ、TORシグナル伝達系について調べた結果、GADD34KOの細胞では正常の細胞に比べAkt-mTORの活性の上昇がみられた。これらのことから、GADD34はmTOR活性を抑制し、栄養制御による老化の抑制に関与している可能性が示唆された。来年度は、GADD34を過剰発現させ、GADD34がどのようにしてシグナル伝達系を制御してるのか、さらに詳細な分子メカニズムの解析を行う。
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