運動不足や身体活動量の低下に伴う慢性代謝性疾患の増加は、我が国における深刻な問題である。先進国における活動・運動不足は、社会経済構造などの変化によるものと考えられているが、一方、自発的な運動意欲の低下も深刻な原因の一つと考えられている。しかし、自発的な運動を調節している機序は不明である。そこで本研究では、自発運動の調節機構を解明することを目的とし、自発運動を調節している因子の検索を行なった。これまでに、近交系にて高い自発的運動を行うモデル動物(SPORTS rat)を確立している。今回、このSPORTS ratは摂食調節因子Ghrelinの血中濃度が有意に低いことが明らかしてきた。このSPORTS ratにGhrelinを筋注投与すると、摂食量の増加とともに自発運動量が有意に低下した。さらにGhrelin投与に加えて、Ghrelinの前駆体prepro-Ghrelinの由来因子の1つであるObestatinを同時に投与すると、顕著にGhrelinによる摂食量増加が抑制されたが、自発運動への影響はみとめられなかった。よって12つのPrepro-Ghrelin由来因子は両者とも摂食調節に関与しているが、自発運動調節にはGhrelinのみが関与している可能性が示唆された。これまでに摂食を調節する因子が自発運動量を調節するという報告は少なく、運動不足による肥満への新しい改善対策に繋がるかもしれない。
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