研究概要 |
本研究は,高強度運動後に生じる一時的な免疫機能低下(オープンウィンドウ現象)に対する運動トレーニングの効果について明らかにすることを目的として,今年度はラット急性運動後にLipopolysaccharide(LPS)を投与する実験モデルを用いて,免疫機能に対する運動トレーニング効果の検討を実施した. F344系雌ラットは,トレーニング群とコントロール群に分け,トレーニング群には15%傾斜,15~21m/分のドレッドミル走を1日15~30分,週5日,4週間のトレーニングを負荷した.トレーニング期間終了後,運動トレーニング群とコントロール群は,それぞれ急性運動群と安静群に分けた.急性運動群には,トレッドミル走を速度漸増法により疲労困憊に至るまで負荷した.安静群はケージ内で2時間安静を保持させた,また一部のラットには,麻酔下にてLPS(1mg/kg)を腸骨静脈より投与した.血液および組織サンプリングは,安静時,急性運動終了直後,LPS投与1時間後に行った. 疲労困憊に至るまでの運動時間はトレーニング群の方がコントロール群よりも長く,運動トレーニングの効果が認められた.疲労困憊運動後の血漿アドレナリンおよびドーパミン濃度はトレーニング群の方がコントロール群よりも高かった.安静時において,トレーニング群の血漿tumor necrosis factor(TNF)-alpha濃度はコントロール群よりも低値を示し,疲労困憊運動後においてはトレーニング群とコントロール群に有意な差はなかった.以上のことから,運動トレーニングが安静時のLPSに対するTNF-alpha応答を低下させ,急性運動の影響を減弱している可能性が示唆された.本実験において,オープンウィンドウ現象に対する運動トレーニングの影響が明らかとなった.
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