研究概要 |
本研究の目的は,高強度運動後に生じる一時的な免疫機能低下(オープンウィンドウ現象)に対する運動トレーニングの効果について明らかにすることである。今年度はラット急性運動後にLipopolysaccharide(LPS)を投与するオープンウィンドウ現象の実験モデルを用いて,免疫機能に対する自発運動トレーニングの効果を検討した。回転ケージによる10週間の自発運動を行わせたF344系雌ラットに,疲労困憊に達するまでトレッドミル走を負荷した後,麻酔下にてLPS(1mg/kg)を腸骨静脈より投与した。そして,急性運動終了直後とLPS投与1時間後に血液や組織試料を得て,分析に用いた。 その結果,トレーニング群の方がコントロール群よりも体重あたりの心臓やヒラメ筋,副腎の湿重量は重く,運動トレーニング効果が認められた。血漿ストレスホルモン濃度について,急性運動の影響はみられたものの,運動トレーニングの影響はみられなかった。LPS投与1時間後の血漿tumor necrosis factor(TNF)-alpha濃度について,トレーニング群がコントロール群に比べて有意に高く,急性運動群が安静群に比べて有意に低かった。またトレーニング群とコントロール群において,急性運動の有無による有意差がみられた。そこで,組織中TMF-alpha mRNA発現を調べた結果,肝臓での発現は安静群よりも急性運動群が有意に低いが,運動トレーニングの影響はみられなかった。一方,腎臓中TNF-α濃度について,運動トレーニングによる影響がみられた。以上より,運動トレーニングはLPSに対するTMF-α応答を血中や腎臓中で変化させることが明らかとなった。 本研究の結果は,オープンウィンドウ現象が運動トレーニングの影響を受ける可能性を示唆するものである。
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