日本人は、欧米人に比し軽度の肥満で、内臓脂肪や脂肪肝・筋肉内脂肪といった、代謝疾患と結びつきが強い「悪玉」の脂肪蓄積が起きやすい。一方で、これらの異所性脂肪は、運動でもたらせられるような軽度の減量で、減少しやすいことも知られており、運動の効果判定に有用かもしれない。そこで、①こまめに体を動かすと、総消費エネルギー量は増加しやすく減量効果に優れるが、筋肉局所への影響は小さい②まとまった運動は、減量効果は高くないが、筋肉局所への刺激が強く、筋肉内脂肪はもちろん、マイオカインなどを介して内臓脂肪や脂肪肝の減少しやすい、という仮説をたてた。肥満糖尿病者の検討(n=19)で、6か月の非監視下での運動介入の結果、有意な脂肪量の減少(1.9㎏)に伴い、内臓脂肪断面積・肝脂肪(肝CT値)の減少を観察した。一方で、大腿筋肉断面積や筋肉内脂肪(大腿筋肉CT値)は変化せず、これら体脂肪分布の改善と心肺持久力の改善との関連も明らかでなかった。非監視下の運動指導で、「こまめな活動」と「まとまった運動」を明確に区別することは困難で、後者の効果は、健常男性(n=16)にて監視下高強度インターバル運動を用いて検討した。結果、わずか週2回、16週間、1回約45分のトレーニングにて顕著な(~20%)心肺持久力の改善と、わずかながら有意な筋肉量の増加を認めた。さらに、減量効果は認めなかったものの内臓脂肪の減少が一部の症例で観察された。肥満者・健常者いずれの検討でもマイオカインの一つである血中BDNF濃度に介入前後で明らかな変化はなく、体組成指標との関連も明らかでなかった。以上より、当初の仮説は十分に検討できなかったが、高強度インターバル運動は、減量とは独立して体脂肪分布を改善させる可能性が示唆され、運動指導方法の一つのオプションとして今後メカニズムを含めたさらなる検討の価値があるものと考えた。
|