研究概要 |
現在,糖代謝の指標として空腹時血糖値が広く用いられているが,近年,心血管疾患リスクをより予測できるとして,食後血糖値が注目されている.食後血糖値上昇は,空腹時血糖値上昇よりも前段階に生じるとされ,早期の糖代謝異常を反映するものである.そのため,食後血糖値上昇を引き起こす要因を解明することは,心血管疾患予防につながると考えられる.そこで,食後血糖値上昇を引き起こす要因を探るため,本研究では食後血糖値に及ぼす短期間の高脂肪食摂取の影響を検討した. 対象者は,若年成人男性9名(年齢24~30歳)であった.対象者に普通食ならびに高脂肪食を3日間摂取させた.それぞれの摂取期間後に120分間の経口糖負荷試験を実施し,試験中に経時的に血液を採取した.採取した血液から,グルコース(糖),インスリン,C-peptide,遊離脂肪酸,およびアディポカイン(インターロイキン6,TNFα)濃度を測定し,それらの動態を普通食後と高脂肪食後で比較した. 経口糖負荷試験中のグルコース濃度は,普通食摂取後に比べ,高脂肪食摂取後において有意に高値で推移した.また,グルコース濃度曲線下面積は,普通食摂取後に比べ,高脂肪食摂取後で有意に高値であった.インスリン濃度の推移は,普通食摂取後と高脂肪食摂取後で違いは認められなかった.C-peptide濃度は,普通食摂取後に比べ,高脂肪食摂取後に高値で推移し,曲線下面積にも違いが認められた.遊離脂肪酸,インターロイキン6およびTNFα濃度の動態には,普通食摂取後と高脂肪食摂取後で大きな違いはなかった. これらの結果は,短期間の高脂肪食摂取が食後血糖値上昇を引き起こす要因であることを示している.高脂肪食摂取による食後血糖値の上昇は,末梢組織の糖取り込みの減少,もしくは肝臓の糖放出の増加が関与していると考えられる.
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