研究概要 |
現在,糖代謝の指標として空腹時血糖値が広く用いられているが,近年,心血管疾患リスクをより予測できるとして,食後血糖値が注目されている.急激な食後血糠値上昇は,血管障害を惹起するため,その予防が重要となる. 食後血糖値上昇を引き起こす要因として,短期間の高脂肪食摂取があげられる.一方,一過性の有酸素性運動は,運動後,数日間にわたり末梢の糖取り込みを増加させることから,食後血糖値上昇を抑制すると考えられる.そこで,本研究では一過性の有酸素性運動が短期間の高脂肪食摂取により引き起こされる食後血糖値上昇に及ぼす影響を検討した. 対象者は,若年成人男性11名であった.対象者に普通食(普通食試行)ならびに高脂肪食(高脂肪食試行)を3日間摂取させた.加えて,高脂肪食を3日間摂取させ,摂取期間に中強度有酸素性運動(高脂肪食+運動試行)を実地させた.それぞれの試行後に120分間の経口糖負荷試験を実施し,試験中に経時的に血液を採取した.採取した血液から,主にグルコース,インスリンおよびC-peptide濃度を測定し,それらの動態を3試行間で比較した. 経口糖負荷試験中のグルコース濃度は,普通食試行後に比べ,高脂肪食試行および高脂肪食+運動試行後で有意に高値であった.また,グルコース濃度曲線下面積は,普通食試行後に比べ,高脂肪食試行および高脂肪食+運動試行後で有意に高値であった.しかしながら,インスリン濃度の推移および曲線下面積には3試行間で違いは認められなかった.また,C-peptide濃度推移および曲線下面積にも3試行間で違いはなかった. これらの結果から,一過性の中強度有酸素性運動では短期間の高脂肪食摂取により引き起こされる食後血糖値上昇を抑制する効果が小さいことが明らかとなった.
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