研究課題/領域番号 |
22700704
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研究機関 | 倉敷芸術科学大学 |
研究代表者 |
椎葉 大輔 倉敷芸術科学大学, 生命科学部, 講師 (20515233)
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キーワード | Gas6 / マクロファージ / 骨格筋 / 貪食 / C2C12 / M1 / M2 / スイッチング |
研究概要 |
H22年度の成果をふまえ本年度は、損傷骨格筋に対するGas6中和抗体投与の影響を組織染色(HE、TUNEL、脂肪滴)から検討した。合わせて,Gas6発現増強メカニズムの解明を目的として好中球除去マウスおよび、筋芽細胞株(サテライト細胞モデル細胞)を用いた検討を行った。その結果,以下の知見を得た。 (1)損傷骨格筋に対するGas6中和抗体および遊離型Gas6レセプター投与は、免疫細胞の組織への浸潤を阻害しない (2)損傷骨格筋に対するGas6中和抗体および遊離型Gas6レセプター投与によりアポトーシス細胞(自発的に行われる細胞死,細胞自殺とも呼ばれる)の組織からの除去が遅延する (3)損傷部位へ浸潤する好中球(免疫細胞の一種)を生体より除去しても、Gas6発現は完全には抑制されない (4)筋芽細胞株は分化(細胞同士の融合、筋管形成)する際にGas6産生を有意に亢進し,その産生は時間依存的に増強する (1)および(2)の結果は、損傷骨格筋で強発現するGas6は免疫細胞の誘導(組織へ呼び寄せる)には影響していないが、死細胞除去には関与している可能性を示すものであった。また、(3)および(4)は損傷骨格筋におけるGas6産生の一端を組織に常在するサテライト細胞が担っている可能性を示唆するものであった。これらの知見は、損傷筋修復においてGas6が一定の関与をしている可能性を示すものであり、他に報告のない新規性の高いものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は損傷骨格筋におけるマクロファージのスイッチングに対するGas6の影響について検討するものであり,H22年度から3年計画で実施している。当初予定通り,H22年度およびH23年度の研究活動で,(1)損傷筋において,Gas6は強発現する(生体内実験)(2)Gas6はマクロファージのサイトカイン産生パターンを変える(試験管内実験)(3)筋芽細胞は増殖停止時にGas6発現を増強する(試験管内実験)という成果が得られた。またH24年度に計画している,生体内Gas6阻害実験も一部前倒しで開始しており,当初予定通り計画が遂行される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究進捗状況を踏まえ,本年度はGas6阻害モデルを中心として,より生体に近い形でのGas6の影響について検討する予定である。具体的には,Gas6の遺伝子干渉法を用いて,Gas6の影響を観察する予定である。また,本年で計画最終年度であることから,これまでの学会発表活動とともに,国際雑誌へめ論文投稿を準備している。 なお,現在まで研究の大幅な変更および解決困難な問題は生じていない。
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