研究概要 |
魚油に含まれるオメガ3脂肪酸には心臓血管系疾病による死亡リスクス高齢患者において下げるだけでなく,このリスクファクターであるアテローム性動脈硬化の進行を中年において遅らせる効果がある。しかしながら,どのような機序でこうした効果が発揮されているのかという点については不明な部分が多い。そこで本度は,この予備的検討として,魚食群(男性2名と女性10名,週3-4回以上の魚食習慣,21.4±3.7歳)と統制群(男性2名と女性11名,週1-2回以下の魚食習慣,21.9±3.1歳)を対象として,暗算および鏡映描写課題遂行時の心臓血管を調べた。 その結果,統制群として魚食群では,安静および課題遂行中の全区間において,平均血圧,心拍数,脈波伝播時間が有意に低く,前駆出期,圧受容体反射感度が有意に高いことが明らかとなった。これらの結果は,健康的な心臓血管系活動性および低い動脈スティフネスが,魚食群で認められる心臓血管系疾病罹患率の低さを説明する背景機序の1つとなっている可能性を示唆するものである。 来年度は,この結果を踏まえ,既に始まっている「オメガ3脂肪酸群」対「プラセボ群」による二重盲検ランダム化比較試験(平行群間比較試験)を引き続き行う予定である。具体的には,20歳前後の研究参加者にオメガ3脂肪酸もしくはプラセボのどちらかを12週間摂取させ、その前後において,精神的ストレス課題遂行時の心臓血管系反応のパターンに違いが生じるがどうかを明らかにする。
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