研究概要 |
本研究の目的は、自発的身体活動・運動行動誘発のメカニズムを、遺伝子多型からアプローチして解明することである。対象は、健康な成人男女609名であった。このうち、重篤な疾患および整形外科的疾患を有するもの、70歳以上を除いた530名を解析の対象とした。 ベースラインデータにおいて、身体活動・運動行動と摂食行動との関連について検討を行ったところ、感情的摂食と低強度身体活動時間および不活動時間との間に相関が認められ、感情的摂食を行いやすい人は、低強度身体活動時間が少なく、不活動時間が多いことが示唆された。また、ベースラインにおける身体活動量が週23メッツ・時より少ない人を対象として、身体活動量の増大を目指した介入を行う身体活動介入群(n=94)、介入を行わない非活動対照群(n=88)を無作為に割り付けた。身体活動介入群は、1年間の介入により週20.3メッツ・時から週25.2メッツ・時まで増加し、非活動対照群(21.0→23.8メッツ・時/週)との間に交互作用が認められ、身体活動介入群で有意な身体活動量の増加が認められた(p<0.05)。また、これらは高強度身体活動時間を増加させることで総身体活動量を増大させる傾向が認められた。身体活動介入群において、1年間の身体活動の増加量を2分位に分類し、増加群(n=48,Δメッツ・時/日=1.7±1.1)と非増加群(n=46,Δメッツ・時/日=-0.2±0.5)において、摂食行動関連遺伝子の遺伝子型頻度に差があるかを検討したところ、いずれの遺伝子型においても差は認められなかったが、1年間の身体活動の増加量を3分位に分類し、最高位と最低位において遺伝子型の頻度に差があるかを検討したところ、グレリン遺伝子のMM型は身体活動量の増加群において頻度が高いことが示された(増加群:10.4%、非増加群:1.6%,p<0.05)。身体活動・運動行動と摂食行動との間には相互作用があることが示唆され、その関連には摂食行動関連遺伝子が関与している可能性が示唆された。
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