研究概要 |
高齢者における日常身体活動の実態を加速度センサー付体動計で把握し、骨粗鬆症およびサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)の予防や改善のための最適である身体活動のパターンについて、5年間の縦断的な検討を行った。 本研究の参加者80名に対し、加速度センサー付体動計を1年間、終日装着してもらい、歩数や10段階の活動強度を加味した消費カロリー、数秒ごとの活動パターン等の縦断的な変化を調べた。また、骨筋系変数として、骨強度は超音波骨評価装置を用い、利き足の踵骨で超音波の音速と透過指標を毎年測定し、音響的骨評価値を算出した。筋量は四肢筋量指数を算出した。分析の結果、身体活動(歩数、中強度活動時間)の縦断的な変化においては、5年間はベースライン値と有意な差はみられず、その後、低下する傾向が確認された。身体活動と骨健康では、横断研究の結果と同様に、男女とも7000歩以上/日、15分以上/日の身体活動を行っている者では、ほぼ全員が骨粗鬆症の診断基準値を上回っていた。また、5年間のCox比例ハザードモデルの結果、6,900歩以下/日かつ<16分以下/日行っている者は、>8,900歩以上/日,>25分以上/日の身体活動を行っている者に比べ、骨折閾値の水準に露出される相対危険率はそれぞれ2-3倍、2-4倍であった。サルコペニアの水準に露由される相対危険率は1-4倍、2-5倍であった。本研究から、男女とも筋骨格系のより良好な健康に関する身体活動閾値は、歩数>7,000~8,000歩/日かつ/または中強度活動時間>15~20分/日であることが確認された。これらの結果により、筋骨格系の健康の維持、特にサルコペニアを予防するためには、1日少なくとも15~20分の適度な(時速約5kmに相当)活動と、最低限45~60分の軽度な活動が必要であることが示唆された。
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