研究課題/領域番号 |
22700710
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
水落 正明 三重大学, 人文学部, 准教授 (50432034)
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キーワード | 生活時間 / 男女差 / 日仏比較 / 未成年期 |
研究概要 |
わが国で問題となっている生活時間の男女差、特に有配偶男性の家事時間が絶対的、相対的に少ないことについて、これまで未成年期の経験がどの程度重要であるのかについて、分析されてこなかった。男性の家事参加は少子化対策としても重要であり、その規定要因の解明には社会的な要求も大きい。そこで本研究では、日本とフランスの生活時間データを使用し、未成年期から家族形成期にかけての生活時間の比較分析することで、男女差が生じる要因とその解消策について検討する。本年度は具体的には以下の研究を行った。 1.データ分析 日本については「社会生活基本調査」(1986年、1991年、1996年、2001年、2006年)、フランスについては"Emploi dutemps"(1985-1986年、1998-1999年)のいずれも個票データを使って回帰分析を行った。その結果、主に日本については(1)男子は親の影響を受けにくいが、女子は親の影響を受けやすいこと、(2)女子は母親の家事を代替し、父親の家事を補完していること、などが明らかになった。また、日仏比較から、未成年期で既に日本では男女間の格差が大きく、フランスでは非常に差が小さいことがわかった。成年期の男女の家事時間の差と合わせて考えると(3)未成年期の家事参加はその後の家事参加に対して重要であること、も明らかになったと言える。これは義務教育段階での政策の必要性を示唆するものである。 2.研究成果報告と情報収集 上記成果を、国際生活時間学会(IATUR)のカンファレンス(8/1-3、オックスフォード大)で報告し、ベルギーやフランスなど欧州の研究者と意見交換を行った。欧州でも同様の問題が議論されていることや、仕事を含めたすべての時間の中で家事を考える必要性があるなどのアドバイスを受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活時間に関する個票データを使って日仏比較を行うという目的は達成されている。未成年期の男女に対象をしぼった分析を行った結果、当初の想定どおり、未成年期で既に生活時間の男女差が日本で大きく、フランスで小さいこともわかった。また、そうした生活時間に与える親からの影響についても回帰分析により明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初は日本のデータについて「社会生活基本調査」の調査票Aによる分析のみを計画していたが、他の研究者などからの指摘から、子どもが誰と過ごしているのかについて分析する必要が生じている。そこで本研究の最終年度は「社会生活基本調査」の調査票Bを使い、子どもがいつ、誰と過ごしているのかを明らかにすることで、未成年期の生活時間配分に対する親の影響について明らかにする。現在、調査票Bのデータ利用についての申請を準備している。
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