親が子供とどのように過ごすかによって、子供の将来の生活時間配分が異なってくることが予想される。そこで、子供の性別や兄弟構成が父母と過ごす時間に与える影響について分析した。特に性別の影響に注目したが、その基本的な仮説としては、①性別選好の存在、②親子の性別の違いによるケアの難しさ、③家系の継承の3つが考えられた。2006年の「社会生活調査」B票の個票データを使い、10歳から18歳までの学生を分析対象に、マルチ・レベル推定を行った。 最初に父親については、2人兄弟の世帯では、男の子供とより多くの時間を過ごす一方、一人っ子世帯では、男の子供より女の子供と過ごす時間のほうが多くなっていることが明らかになった。国外の先行研究では、父親は男の子供とより多くの時間を過ごす傾向があり、それが将来のアウトカムに格差をもたらすことが指摘されていた。それに対して日本では、男の子供が優位であるかどうか、はっきりとは言えない結果となった。また、性別だけでなく、兄弟構成も重要な要因であることがわかった。 母親については、男の子供により多くの時間を投資するような傾向は全くなく、逆に男の子供の場合に投資時間が少なくなることがわかった。したがって、性別選好やケアの難しさといった仮説は支持されたと言える。一方、長子の男子の場合はさらに投資時間が減少することから、母親においては家の継承という仮説があてはまらないことがわかる。 以上から、日本においては、子供の性別によって親の時間投資が異なるのかについて、確定的な知見は得られなかった。ただし、性別や兄弟構成といった子供の責任ではない部分によって、親の時間配分に違いが生じていることが確認されたことから、より詳細な分析結果を待って政策を検討することは必要であろう。
|