本研究は、家庭科教育におけるシティズンシップ教育の在り方について国際的視点から分析し、日本の家庭科教育への導入と展開をめざすことを目的とする。そこで、市民の環境に対する配慮行動などから、シティズンシップが育っているといわれるドイツのシティズンシップ教育の現状と事例から、特に個人の生活活動を視点としたシティズンシップ教育の扱いについて、聞き取り調査、カリキュラム研究、教育実践研究等から分析したうえで、日本の家庭科教育での授業案の作成を行う。 本年度は、生活者としての個人の行動に介入する要因として、ドイツにおけるシティズンシップ教育の役割と課題について検討することを目的とした。 研究実施計画は、まず始めに、シティズンシップに関する国内外の文献調査とドイツの学校教育に関する文献の整理から、ドイツのシティズンシップ教育の方向性を調べた。次に、ドイツのシティズンシップ教育の動向、学校教育でのカリキュラムや教育内容、大学や教育関連施設と連携した専門家の育成、地域での実践事例について現地での聞き取り調査を行い、ドイツのシティズンシップ教育の現状を把握し、課題について分析した。 その結果、ドイツでは、"Demokratie lernen & leben"プロジェクトなどすでにシティズンシップ教育を学校全体で推進している事例があることが分かった。しかし同時に、実際の学校教育現場においてシティズンシップ教育を推進していくうえで、教員間での専門性と教育力に限界があることも分かった。そのため、今後ドイツでは、教員以外の専門家の育成に入れていくこととしている。この専門家育成のプログラムは、2010年から本格的に始動するため、今後のプログラムの活動に注目していく予定である。
|