本研究は、現在求められつつある「選択的夫婦別姓制度」の導入による民法改正が、その後別姓を選択した夫婦の子どもへの影響(特に、アイデンティティの形成や、家族の紐帯についての意識)について、一連の研究によって検証することを目的としている。「選択的夫婦別姓制度の導入」は議論の途中にあり、未だ導入される状況にない可能性もあるため、現在増えている親の離婚や再婚による子どもの改姓が、子どものアイデンティティ形成にどのように影響するかを並行して検証し、家族と氏のかかわりや子どものアイデンティティ形成への影響を明らかにすることを目的としている。 平成22年度から平成25年度の継続的研究ではあるが、平成22年度の研究では、子どもと氏との関係、アイデンティティの形成についての文献研究を行い、子どもが自分の氏をどのように認識しているか、そして保育園・幼稚園に通う子ども達と保護者、保育者を対象に、子どもの氏についての検証実験を行った。 その結果、外国では親の離婚や再婚による改姓が強制されたり、自分の結婚によって改姓が強制されたりするケースは必然ではないことが伺えた。また、子どもは最初に自分の名前を覚えるため、その名前によって文字や固有名詞を習得していくことが分かった。日本においても例外ではなく、子どもが最初に書く文字は自分の名前が多く、子ども達も「フルネーム」で自分の名前を答えるなど、氏と名との関係は話して考えるものではないことが明らかとなった。加えて、途中改姓による影響は保育現場でも多くみられ、保育者が混乱したり、子ども達同士の関わり方について悩みを持ったりする保育者もみられた。民法改正の動向を見ながら、今後も研究を続ける必要がある。
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