本研究は、さまざまな価値観による賛成、反対が拮抗すると言われている「選択的夫婦別姓制度(以下、別姓制度)」の導入による民法改正が、実現した場合の別姓を選択した家族への影響を考察するためのものである。別姓制度が導入された場合、その夫婦の間に生まれた子どもへの影響(特に、アイデンティティの形成や家族の紐帯について)懸念される声も多い。特に子どものアイデンティティの形成について研究によって検証することを目的としている。 別姓制度の導入は、長期議論の最中でありながらも、いまだ導入されていない状況があるため、現在増えている「親の離婚や再婚」による子どもの改姓が、子どものアイデンティティ形成にどのように影響するかを並行して検証し、家族と氏のかかわりや離婚や再婚による子どもの改姓が、子どものアイデンティティ形成への影響を明らかにすることを目的としている。 これまで子どもと氏の関係を文献等から研究し、未就学児の子どもたちを育てている保護者への質問紙調査や未就学児の子どもたちを対象とした文字の選好実験結果を基に、子どもたちへの聞き取りをふまえながら分析、考察を行った。研究期間中に民主党から自民党政権になったため、別姓制度導入の可能性は低くなり、導入後の検証が厳しくなったため、平成24年~25年度においては、親の離婚・再婚を経験した子どもにインタビューを行い、聞き取りから検証した。 結論としては、幼い子どもたちの多くは、自分の名前から文字に興味関心を持ち、覚え始める。離婚や再婚を経験した子どもは、氏の変更については煩わしさを感じる一方で、実生活を優先に考える傾向が見られ、家族の氏、個人の氏へのこだわりよりも、実際に家族関係が良好かどうかを期待することが明らかになった。仮に選択的夫婦別姓が導入されたとしても、実際の家族関係が良好であるかどうかが子どもにとって重要であることが検証されたと言える。
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