本研究は、子どもの遊びをはじめ、学校・家庭生活に焦点を当て、牧畜区の子どもの成長発達を応じたかつ伝統文化の継承を配慮した生活環境づくりを検討する。 シリンゴル盟の東ウジュムチン旗と西ウジュムチン旗では、学制寮や食堂等整備された寄宿制モンゴル族の小学校は各1校がある。2校とも子どもの生活実態、保護者の意識、行政側の支援策、学校側の教育方針・取り組みが類似している。 子どもの生活実態では、子どもの通学形態に関しては、家庭に任せており、調査した事例により、多くの子どもは学校の寮に入居せず、通学方法等は個人的、家庭ごとに解決を図っている。寮に入居していない要因の一つは、子ども自身が寮に住みたくない理由を挙げていた。 保護者の意識に関しては、子どもに対する教育期待では最終学歴は大学或いは子どもに任せると答えており、子どもに就かせたい職業では子どもに任せると答える保護者が多いが、牧畜業に就かせたくない保護者もいる。子どもに伝統文化を継承させる意識が弱い。また、「母親と町に出かけて借家」パターンの若い母親である保護者自身でも町に出かけたことにより、牧畜区へもう戻りたくないと生活様式に対する考えに変化が起こっている。さらに、離婚家庭が増え、家庭破壊されている問題等が生じている。 行政側の支援策では、行政側が「逆留守子ども」の貧困家庭を対象とする「両免一補」の経済的な支援を実施されているが、一般的な家庭には経済的な支援を受けにくい。それ以外、同じ立場の人同士のネットワークづくり、行政や地域などの生活支援ネットワークの構築などが必要である。 学校の教育方針では、伝統文化の継承を重視しており、授業や活動時間でモンゴル民族の伝統文化を教育させている。学校側からの家庭に対する経済的な支援や児童心理のカウンセラー等の取り組みがみられていない。
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