本研究の目的は、グループホームにおける自閉症者の環境調整行動と温熱環境実態を把握し、その特徴および問題点を分析することである。そして、温熱環境を快適に維持にするための生活環境・設備機器・住み方などに関する改善・工夫(環境改善手法)とその効果を明らかにしようとしている。研究開始にあたる平成22年度は、文献サーベイと郵送アンケート調査をおこなった。既存研究のサーベイのうち、自閉症者・知的障害者グループホームに関する調査研究については主だった文献をほぼ収集し、知見をまとめた。当初の見通しのように、グループホームにおける自閉症者の環境調整行動や温熱環境実態に関連した文献はほとんどみられなかった。冬期アンケート調査は、平成22年3月に中国地方のグループホーム(ケアホームも含む)546事例に対して郵送で行い、回収数は181事例(回収率33.2%)であった。調査項目は、共有空間と寮生室における暖房器具の種類、主な温度管理者、暖房器具使用に関わるトラブルの発生状況、寮生の環境調整行動に関わる自立度などである。現在、これらの調査データの整理・分析中である。一つの知見として、季節や気温の変化に合わせて室温管理がうまくできない寮生がいる事例は多いが、寮生室の温度管理は主に寮生によって行われており、室温管理や暖房使用に関するトラブルが生じていることが量的に明らかになった。今年度は研究発表ができなかったので、次年度以降行う予定である。
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