本研究の目的は、グループホームにおける自閉症者の熱環境調整行動と温熱環境実態を把握し、その特徴および問題点を分析することである。そして、温熱環境を快適に維持にするための生活環境・設備機器・住み方などに関する改善・工夫(環境改善手法)とその効果を明らかにしようとしている。研究最終年度にあたる平成23年度は、前年度に実施したアンケート調査の分析・考察を行い、夏期・冬期のケーススタディ(温熱環境測定)と先進事例に対する訪問ヒアリング調査を実施した。夏期・冬期ケーススタディでは、山口県東部にあるグループホーム4件(居住者は計14名、障害程度は全員重度)を対象とし、LD空間と個室、屋外の温熱環境測定と、冷暖房の使われ方や世話人による介助内容、居住者の障害特性・個性などを把握するためのヒアリング調査をおこなった。その結果、居住者がエアコンの使い方がわからないために、夏期でも暖房を使用することや、5℃以上の急激な室温上昇・下降が短時間に何度も繰り返すことなど、温熱環境を快適に維持するうえで様々な問題が生じていることが明らかとなった。また、先進事例に対する訪問ヒアリング調査では、自閉症者に対する生活支援を先進的におこなっているおしまコロニー(北海道)のグループホームと入居施設を訪問し、自閉症者の熱環境調整行動の自立状況や世話人による支援の内容、生活環境・設備機器・住み方などに関する改善・工夫の実施状況等について調査した。
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