平成23年度は、大豆ペプチドを食品工業に使われる酵素で切断したタンパク質分解物を出発材料として用いた。大豆ペプチドのin vitroでの抗酸化活性の測定および、大豆ペプチドをそのまま、または分画物をミートパテに添加し、脂質の酸化を評価し、活性の強いペプチド画分を得ることを目的とした。ペプチドの分画には、通常逆相HPLCが利用されるが、HPLCでは食品に利用できる量を分画することが困難である。そこで、本研究では、サンプル自身の等電点の多様性を用いて、アンフォラインフリーの調製用の等電点電気泳動であるAutofocusing装置を使ってのペプチドの分画を行った。この方法は大量分画が可能で、また有機溶媒などを必要とせず、食品での評価に適している。食品タンパク質の酵素分解物をAutofocusing方法により分画し得たペプチド画分と分画前のペプチドを豚肉パテに添加後、そのまままたは加熱調理し、冷蔵及び室温保存した。保存期間中の脂質の酸化程度を過酸化脂質分解物であるマロンジアルデヒド(MDA)の濃度を測定することにより食品中での抗酸化活性を評価した。また、Autofocusing画分と分画前のペプチドのin vitroでの抗酸化活性をラジカル消去能(OH、DPPHラジカル)、金属キレート能、ORAC法を用いて検討した。 DPPHおよびOHラジカル消去能評価では、塩基性画分より酸性画分で高い活性を示し、ORAC法による酸化抑制効果では、弱酸性および弱塩基性画分で抗酸化効果が見られた。豚挽肉に分画前の大豆ペプチドを添加した場合では、加熱調理後保存時のMDA生成を抑制する傾向が見られた。一方、Autofocusing画分混合物を添加した場合では、酸性、弱酸性画分において対照群と比較してMDA生成が抑制された。この結果はキレート能と相関しており、酸性、弱酸性画分にキレート能を有するペプチドが含まれる可能性が示唆された。また、1%大豆ペプチド添加群と対照群間での嗜好型官能検査の結果、対照群と比べ嗜好性に有意な差は見られなかった。このことから、1%大豆ペプチドの添加によっても豚挽肉の嗜好性は低下しないことが確認された。以上の結果から、大豆ペプチドを食品に添加した場合、抗酸化活性を示すことが分かった。さらに、Autofocusing方法により食品中での抗酸化活性の強いペプチド画分を調製することが可能であることが示唆された。このことより、大豆ペプチドが有効な抗酸化剤になり得ることが示唆された。
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