研究概要 |
1.文献及び資料収集・整備 タイ,日本,台湾の他,韓国の「モチ」に関する資料・文献を収集し,分類整理をした.韓国では,年中行事,通過儀礼のモチがある.これまでタイや日本のモチを搗きモチ,練りモチ,チマキと分類してきたが,韓国には(1)甑餅(ウルチ米粉を甑で蒸す)(2)搗餅(ウルチ米粉,モチ米粉を甑で蒸し,石臼・木製の按盤の上で搗く)(3)油煎餅(モチ米粉を熱湯で練り成形し,油で焼く)(3)ゆで餅(モチ米粉やモチキビ粉を熱湯でよくこねて茄でる)と独自の分類がある.今後,これらをどのように,他の地域のモチ分類を合わせるか否か検討中である. 2.モチ食文化の実態調査(タイ,韓国へ現地調査) 1)タイ調査 平成23年8月4-12日,18-19日平成24年3月18-23日ヤオ族・アカ族・タイ族の現地調査の調査をした.(1)ヤオは,旧暦の正月のモチを搗く.8月戦争で亡くなった祖先のため異なる2つの形状のチマキを作る.それぞれ♂♀を意味している.藁の灰をモチ米に入れるのは古代米の名残であることが明らかとなった.(2)アカは,12月(クリスマス)にモチを揚く.縦杵,縦臼で,蒸し器も全て手作りである.(3)タイは,平地民はモチを搗かない.練りモチ,チマキが主体である.ただし,山地民のタイルーは,エゴマがとれる季節になると石製の臼クロックでモチ米とエゴマを掲き,火であぶって食べる習慣がある.これは,中国雲南省西双版納に居住するタイルー族と同じであった. 2)韓国調査 平成24年2月22-25日韓国伝統飲食研究所,餅博物館を訪問し,資料・文献の収集他,市場のモチ製造工場の見学,宮廷モチ料理を調査及び実習をした. なお,平成22年度からの繰越予算で,中国(平成23年8月13-17日),台湾(平成23年8月27目-9月4日)へ現地調査を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献収集および現地調査はおおむね順調であるが,「モチ食文化の構成要素の選出,データのコード化」について,やや遅れている.これまで収集した資料・文献及び現地調査で得られたデータを,揚きモチ,練りモチ,チマキに分類し,(1)名称(2)材料(3)作り方(4)作り手(5)道具(6)用いられた方(7)食べ方(8)保存の仕方(9)モチに込められた意義などにコード化して,東アジアのモチ食文化を俯瞰する図を作成する予定であった.タイを基準に進めていたが,韓国では,独自のモチ分類法があり,一概にコード化することが難しくなった。今後,これをどのように他の民族に合わせ分類するか,しないのか,当該地域の研究者や食文化の専門家と検討する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,資料・文献収集・現地調査は,現地調査協力者と相談しつつ実施する予定である. 上述したモチ食文化のコード化については,地域の研究者や専門家と検討する予定である.現段階では,まず杵と臼を用いる掲きモチに特化することを考えている. また,現地調査で記録した画像や動画など研究論文で発表しにくいデジタルデータについて,HP等に活用して一般公開・活用できるよう,SEなど専門家と一緒に準備をしていく予定である.
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