申請者は、ゴマ摂取に伴う「生体組織中ビタミンE濃度を上昇させ、生体における抗酸化能力を上昇させる」というゴマリグナン成分特有の生理作用について研究している。ゴマは日常生活の中では、調理加工をして食されている。しかしながら、これまでにゴマの調理加工条件がゴマ特有の生理作用に及ぼす影響についての報告はない。そこで調理加工をしたゴマの生理作用について検討することにした。 各種調理加工条件がゴマリグナン成分を変化させるか検討を行った。 1、ゴマを「する」「酸で調味する(酢和え)」という調理加工を行った。その結果、セサミン、セサモリンはほとんど変化しないこと、セサミノールトリグリコシド(TG)が3割程度減少することが示された。 2、ゴマを230℃にて「焙煎」した。その結果、セサミン量は変化しないが、セサモリン量が2割程度減少すること、少量であるがセサモリンの分解産物であるセサモールが微量検出されることが示された。 3、ゴマを生味噌と「和え」、4℃(冷蔵庫内に相当)、20℃(室内に相当)、37℃(保温庫内に相当)にて2週間保存した。期間中セサミンやセサモリン量はほぼ変化しなかったが、37℃保存ではセサミノールTGが3日目には半減し、1週間で8割ほど減少した。そして通常ゴマに検出されないフリーのセサミノールが1日目より生成し、2週間目にはセサモリンと匹敵する量が検出された。また、20℃保存では3日目よりセサミノールが検出され、その量は37℃保存の2割程度であることが示された。 以上の結果より、ゴマリグナン成分が各種調理加工により変動することが明らかとなった。 調理加工により生成したセサミノールやセサモールは様々な生理作用が報告されており、食品の生体への機能性が高まった可能性が考えられる。現在、上記の調理加工を行ったゴマを実験動物に与え、ゴマリグナン特有の生理作用にどのような影響を与えるのか検討している。
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