食品は、薬品と違って数多くの成分から成る“成分複雑系”であるが、各食品に含まれる成分情報は乏しいのが現状である。本研究では、食材として野菜に着目し、野菜の成分複雑性がどれほど異なるのかを調べるため、最新の精密質量分析計とコンピュータ解析システムを用いた一斉成分分析をすることで、品種および産地の判別が可能な32種の野菜について、可食部を部位別にわけてサンプルとした。各凍結サンプルをメタノールで細胞粉砕器を用いて粉砕抽出し、フィルター後、分析には液体クロマトグラフィー・フーリエ変換イオンサイクロトロン質量分析計を用いて分析した。エレクトロスプレーイオン化法によるポジティブおよびネガティブ両モードで分析を行い、MS/MSデータおよびPDAも自動取得した。データ処理およびデータアライメントは、我々が開発した解析ソフトウエア(成分ピークピックアップ、サンプルによる成分アライメント)で解析を行った。 本分析の結果、各野菜よりそれぞれ数百成分の存在が確認でき、その数は野菜の種類、部位によって大きく異なっていた。すべての野菜のうち、葉野菜のほうが根菜や果実より成分組成が複雑な傾向を示した。葉野菜ではホウレンソウが、果実ではピーマンが複雑な成分組成を示し、各野菜とも部位による組成の違いが大きく、特に菜の花やブロッコリーなどは花と葉で大きく組成が違った。また、セリ科野菜は、他の科の野菜よりも、それぞれ特徴的な成分が多い傾向にあった。
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