研究課題/領域番号 |
22700747
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
池本 敦 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (60295615)
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キーワード | 食品 / リノール酸 / α-リノレン酸 / ドコサヘキサエン酸 / 間葉系幹細胞 / 肥満症 / 骨粗鬆症 |
研究概要 |
食事から摂取する脂質について、その質に着目し、健康増進と生活の質の向上に最適な必須脂肪酸バランスを追求することを目的とし、特に問葉系幹細胞の分化に着目した。ICR系マウスにn-6/n-3比の異なる飼料を2ヶ月間摂取させたところ、間葉系幹細胞から分化する組織である筋肉及び骨組織の重量がn-3系脂肪酸のDHAが豊富な魚油の摂取で増加したが、同じn-3系のα-リノレン酸の豊富なシソ油では優位な変化は観察されなかった。以上より、同じn-3系脂肪酸でも種類によって効果が異なることが示唆された。また、間葉系幹細胞のモデルであるマウス胎児由来C3H/10T1/2細胞を用い、脂肪・骨芽細胞へ分化誘導したときの遺伝子発現に及ぼすDHAの影響を解析した。DHAは脂肪細胞への分化を濃度依存的に抑制したが、分化のマスター転写因子であるPPARγと脂肪細胞特異的脂肪酸結合タンパク質FABP4の発現は、2日目の初期には促進されたが5~12日には抑制された。脂肪酸合成酵素FAS、脂肪酸不飽和化酵素SCD1及びアディポネクチンの発現は、いずれの期間でも強く抑制された。C3H/10T1/2細胞を骨芽細胞へ分化誘導した場合、DHA処理により骨分化のマーカー分子であるオステオカルシンOCNの発現が減少したが、分化のトリガーとなるオステオポンチンOPNの発現は増加した。マウス頭蓋骨由来MC3T3-Elを用いて検証したところ、DHAは骨芽細胞への分化を濃度依存的に促進し、OCNの発現を低下させOPNの発現を増加させることが確認された。以上のようにDHAは遺伝子発現を制御することで間葉系幹細胞の分化に影響を及ぼし、肥満症や骨粗鬆症の予防に有効であることが示された。これらの成果を、中学校の家庭科の授業に導入したところ、理解度は良好で、事後調査からは脂質栄養教育上の成果が上がったことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、計画した動物実験、培養細胞レベルでの実験、研究成果を活用した教育の実験のいずれも、当初の計画通りに進行している。培養細胞レベルではn-3系脂肪酸による遺伝子発現の変化に関して新たな知見が得られ、研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
骨芽細胞の分化マーカー分子の発現がDHAで促進されるという新知見が得られたので、次年度にさらに追及する必要である。また、本研究の命題である健康増進と生活の質向上の観点からは、食事必須脂肪酸バランスが健康寿命に及ぼす影響を検証する必要があり、今後、長寿遺伝子に及ぼす影響についても解析する計画である。
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