n-3系脂肪酸のDHAは脂肪細胞の分化を抑制し、骨芽細胞の分化を促進した。同じ間葉系幹細胞由来の筋肉細胞の分化に及ぼす影響を解析したところ、マウス骨格筋由来C2C12細胞の筋細胞への分化をDHAが促進した。遺伝子発現を解析したところ、DHA添加によりUCP2、PGC-1α・β及びMyodの発現が上昇し、同じn-3系のα-リノレン酸添加によりMyog及びCapn1の発現が顕著に上昇した。個体レベルで確認するためにマウスにおける食餌脂肪酸の影響を見たところ、高DHA含量の魚油の摂取で筋組織の重量が有意に増加し、UCP2、PGC-1α、PGC-1β及びMyodの発現が上昇した。また、α-リノレン酸含量の高いシソ油の摂取でMyogの発現が顕著に上昇することが示された。以上のように、n-3系脂肪酸は遺伝子発現を制御し筋細胞の分化を促進することが示され、メタボリック症候群などの生活習慣病の予防に有益であると考えられる。 SIRT1はNAD+依存的脱アセチル酵素であり、その活性化は、カロリー制限による寿命延長と同等の効果がある。ヒト肝臓由来HepG2細胞のSIRT1 mRNA発現を調べたところ、DHA処理により上昇することが示された。個体レベルの効果を検証したところ、n-3系のα-リノレン酸を多く含むシソ油とDHAを多く含む魚油の摂取によりマウスの肝臓のSIRT1 mRNA発現が促進された。以上よりn-3系脂肪酸は、抗老化・寿命延長作用を有する可能性があると考えられる。 こうした知見を活用して、必須脂肪酸バランス(n-6/n-3)やダイエットに関する授業を中学3年生を対象に実践した。適正体重や必要な栄養素と食品の把握、肥満の問題と痩せすぎによる骨粗鬆症の問題、脂肪酸の質などのポイントを今回の基礎研究の成果の活用して説明し、良好な理解が得られた。
|