研究課題
近年、高リン血症が独立した心血管疾患の危険因子として確立されている。血清リン濃度は食事からのリン摂取量が影響するが、リン摂取量と心血管疾患との関連について詳細な検討はない。また、食品添加物として多量に使用されているリン酸塩等からの過剰摂取が懸念されているが、心血管疾患の予防を考慮した適切なリン摂取基準は設定されておらず、現在使用されている摂取基準も科学的根拠が不十分である。我々はこれまでに、ウシ大動脈由来血管内皮細胞(BAEC)における高リン負荷実験により、酸化ストレスのみならず、動脈硬化・炎症関連遺伝子の遺伝子発現が濃度と時間依存的に増加すること、またBAECやラットにおいて、eNOS(内皮依存性血管弛緩因子(NO)合成酵素)の不活化によるNO産生抑制に伴い血管弛緩率が低下することを見出した。そこで、高リン血症においてどのような遺伝子が強く関与しているのかを探索するために、ヒトにおけるリン負荷試験を行い、動脈硬化関連遺伝子に加え、酸化ストレス関連遺伝子、炎症・免疫関連遺伝子を探索し、食事性高リン血症における糖尿病や動脈硬化等の生活習慣病や心血管疾患の予防に着目した新規のバイオマーカーを同定することを試みた。試験デザインは、健常男性を対象とし、我々がこれまでに行った高リン負荷試験(Shuto E, et al.J Am Soc Nephrol.2009 ; 20 : 1504-1512)(Nishida Y, et al.Kidney Int.2006 ; 70 : 2141-2147)を参照した。経時的に採血と採尿を行い評価したところ、これまでBAECによって見出した結果と同様の結果を得た。さらに、血管内皮機能評価法として行った血流依存性血管拡張反応検査(FMD)においては、これまで考えていたよりも低い濃度のリン負荷においてFMDが低下することを見出した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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