本年は昨年度に実施した欠食が認知機能(特に顔や顔表情の認知)に及ぼす影響についての疫学調査結果を日本栄養・食糧学会にて発表した。また、朝食摂取日と欠食日の認知課題(ストループ、顔認知、暗算等)の成績については論文にまとめた。昨年度予備検討をおこなった摂取日および欠食日の認知課題(ストループ、顔認知、暗算等)回答時の実施時の脳血流、自律神経活性の本実験を行い、摂食欠食で比較し、生体反応の違いを検討して結果をまとめた。 (1)大学生35名に対して、朝食摂取日と欠食日に、認知課題(ストループ、顔再認、暗算)を施行すると欠食日は3種類の課題の回答数は有意に低下し、さらに顔再認は正当率も有意に低下したため、欠食日は特に顔認知機能が低下する可能性が示唆された。本内容については、千葉県立保健医療大学紀要平成23年度に掲載された(印刷中)。 (2)児童80名を対象にして、朝食摂取日と欠食日に、顔再認課題を施行すると、欠食日は、全体的に認知機能が低下するものの、怒り顔や恐怖顔に対する認知はある程度は維持され、幸福顔や平静顔の認知については、正答率が有意に低下した。本内容は第65回日本栄養食糧学会にて発表を行いトピックス演題に選出された。 (3)大学生15名(全員女性、月経期を除く低温期に実施、朝食摂取習慣は全員週7回)に対して、朝食摂取日と欠食日に、安静後に暗算と顔再認試験を実施し、NIRSによる脳血流を測定した。欠食日は、摂取日に対して安静時の脳血流の平均値が低く、暗算による上昇度は、欠食日が摂取目よりも平均値が高かったが、有意差はなかった。顔再認では左前頭部のTOIおよび還元型Hb(HHb)が欠食日は摂取日よりも有意上昇度が有意に高かった(p<0.05)今回の実験では暗算課題よりも顔再認課題の脳血流の方が、欠食の影響を受けやすいことが示唆された(未発表)。 (4)(3)の対象者について、精神活動以外における欠食による脳血流への影響を調べるために、蹲踞後ただちに、立位の体勢をとり、姿勢の影響を検討したところ、朝食摂取日は体勢の変化に対応して速やかに左右の脳血流が上昇したが、欠食日では立位に伴う脳血流の上昇が低く、両者に有意差が生じた(p<0.05)(未発表)。 上記の調査および実験による検討において、欠食は顔認知および暗算課題に影響を及ぼすことが示唆された。
|