ライフスタイルの変化に伴い、肥満を特徴とするメタボリックシンドローム(MS)人口が増加している。MSの予防や治療には、過食を防ぎ、適正なエネルギー摂取量を遵守することが重要であり、高い満腹度が得られ、かつ持続する食事が望ましい。このような食事を考案するには、生体が感じる満腹度を正確に評価する必要があるが、現在のところ、満腹度は対象者の主観に基づく評価法しかなく、客観的評価法は確立されていない。そこで本研究は、満腹度の客観的評価法を確立し、MSの予防や治療に適した食事療法の構築に寄与することを目的とする。健常者に対し基準となる試験食の負荷試験を行い、食後経時的に採血と、Visual Analog Scale (VAS)による主観的な満腹度の測定を行った。採取した血液から、食後の満腹度に影響を与えると報告のある血糖値や血糖値の変化に伴い変動する血清インスリン濃度、遊離脂肪酸濃度、また食欲に関連すると報告のある血漿グレリン濃度を測定した。各種血液パラメータと主観的な満腹度との関連性を解析したところ、血糖値と血清インスリン濃度は食後の満腹度と有意に正の相関を、血清遊離脂肪酸濃度は負の相関を示した。一方で血漿グレリン濃度は食後の満腹度との関連性は見られなかった。満腹度を従属変数として重回帰解析を行ったところ、独立変数として血糖値と血清インスリン濃度が選択された。以上のことから、主観的な満腹度は血糖値と血清インスリン濃度を組み合わせることで評価できる可能性が示唆された。今後は対象者数を増やすとともに、体格の異なる対象者における評価や、異なる食品における検討を行う必要がある。
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