研究課題/領域番号 |
22700759
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
冨永 美穂子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (50304382)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 食生活 / 異文化比較 / 大学生 / 中学生 / 高校生 / 食意識・態度 / 文化的自己観 / 食事写真 |
研究概要 |
これまで食生活に関する研究は枚挙にいとまがないほど行われているが,社会文化的自己観の観点から食生活,食生活に対する意識・態度の自己評価差について比較した研究は存在しない.また,個人の食事内容をデジタルカメラなどで撮影し,個々人が何をどの程度食しているのかが,視覚的に判断できるようになってきたが,そのデータを栄養指導以外に活用する試みはほとんどなされていない.そこで,大学生を対象に社会文化的背景の類似している東アジア文化圏(日本,韓国),異なる文化圏(オーストリア,ナイジェリア)で身体計測を含めた質問紙による調査を実施し,食意識・態度の構造や実際の食事内容を比較分析することとした.また,日本においては世代間による食事内容に違いについても検討するため,中・高生を対象に調査を行うこととした. 平成24年度は4月から半年間,オーストリアに滞在し,オーストリアの大学生を対象に体組成,食事写真撮影の依頼を含めた食生活調査を実施するとともに日本においても同様に調査を行った.また,学校長の許可を得て,中高一貫校,高校3年生を除く全校生徒を対象に食生活に関する質問紙調査を行った.しかしながら,大学生の調査において,食事写真撮影協力者がほとんど得られなかったことから,質問紙のみの調査をオーストリア・韓国において再度実施した. 本研究に関連した成果として前回調査結果を報文化した.本調査で得られたデータに関して,日本の学生についてはその結果の一部を卒業論文(長崎県立大学シーボルト校女子学生の食生活状況と心理特性並びにこれらの関連性),ナイジェリアのデータについては修士論文(Eating Behaviors of University Students in Southern Nigeria)としてまとめた.その他のデータについては入力作業を行うとともに食事分析結果を協力者に返却した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年4月から同年9月までのオーストリア長期研修期間中に現地大学生の体組成測定,食事写真撮影協力者がほとんど得られず,調査人数が確保できなかったため,質問紙調査を中心に再度調査を実施し,データ入力作業が予定よりも遅れた.同様に日本においても食事写真撮影協力者が増えず,体組成,食事写真,質問紙調査票の3点がそろったデータが24年度前期に予定よりも収集できず,結果分析が滞り,異文化比較などが24年度中にできなかった.また,当初の目的の一つが食事内容のテキストマイニングであったが,予想以上に食事写真が集まらず,食事写真からのテキストマイニングが困難となってしまった.また,研修終了帰国後の大学業務が想定外のことも加わり,予想以上に多く,自分自身の研究時間がほとんど確保できなかった.しかしながら,日本,ナイジェリアの大学生の分析結果についてはその一部を卒論,修論としてまとめることができ,いずれも興味深い成果が得られた.また,高校生については,年度内に450名程度の食事分析結果を協力者個人個人に返却することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続き,収集したデータの入力作業を行うとともに成果をまとめていく.大学生のデータについては社会文化的自己観の視点から精神的健康度を含めた食生活を中心とする異文化比較を行う.中学生については既存のデータとの比較を含めて,性差,学年差,食生活習慣とレジリエンスなどの心理特性との関連性を解析する.高校生については性差および食生活と精神的健康度の関連性を中心に解析するとともに日本の大学生との比較を行う.中学生,高校生,大学生の世代間あるいは異文化間で普段よく食する料理内容のテキストマイニングによる比較などを行い,食しているものの類似性,相違性について明らかにする.これらの分析結果を踏まえ,食生活支援の方向性,方法を検討する.得られた成果については学会発表,報文化を試みていく.また,将来的には文化圏ごとに前回調査と比較を試み,食意識・態度,食生活の変化の傾向を明らかにしていく.
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